Previous slide
Next slide
Menu
ランチョンセミナー(11月9日) 協賛:株式会社MTG
【演題タイトル】
“認識しにくい”骨盤底筋群への間接的アプローチ
―臀筋収縮による女性の尿失禁改善効果および骨格筋電気刺激(EMS)への期待―
【講演者】
二宮 早苗(大阪医科薬科大学看護学部 教授)
【座長】
岡山 久代 筑波大学医学医療系 教授
【抄録】
尿失禁は、生命に直接影響する疾患ではないものの、生活の質(QOL)を低下させ、自尊心の低下など心理面への影響も大きい。特に女性は、解剖学的構造や分娩などにより骨盤底筋群が弛緩しやすく、分娩経験のある30~40歳代の女性では27.3~32.4%に尿失禁の症状が認められる。
尿失禁の改善には、骨盤底筋群を随意的に収縮させることでその筋力を強化する骨盤底筋訓練が治療の第一選択とされている。しかし、羞恥心などから医療機関への受診のハードルは高く、多くの女性が自宅でのセルフケアによる改善を望んでいるのが現状である(二宮ら,2013)。ところが、骨盤底筋群は身体内部に存在するため、自分で正しく収縮できているかを認識することが難しい。加えて、約3割の女性が骨盤底筋群を随意収縮できないことも明らかになっている(二宮ら,2014)。
そこで我々は、骨盤底筋群の随意収縮が困難な女性でも、骨盤底筋群の強化や尿失禁の改善につながるセルフケア方策の開発に取り組んできた。その一つとして、オープン核磁気共鳴画像装置(MRI)を用いた評価により、着用するだけで膀胱頸部が挙上されるサポート下着を開発し、その尿失禁改善効果を示した(二宮ら,2018;Okayama et al., 2019)。さらに、骨盤底筋群の随意収縮と同様に、大臀筋の随意収縮によっても膀胱頸部が挙上されることをMRIやエコーを用いて見出し、臀筋収縮を行うだけで、従来の骨盤底筋訓練と同程度の尿失禁改善効果があることを示した(Ninomiya et al., 2024)。その改善メカニズムは未解明であるが、臀筋収縮により骨盤底筋群へ間接的に作用している可能性が高いと考えている。
一方、リハビリテーション分野などでは、筋力維持・増強を目的とした骨格筋電気刺激(Electrical Muscle Stimulation,EMS)機器が用いられており、近年では、自宅でのセルフトレーニング用のEMS機器(SIXPAD,株式会社MTG等)も広く普及している。現在、我々は大臀筋を標的としたEMS刺激によって、骨盤底筋群へ間接的に作用できるかを検証している。その有効性が示されれば、認識しにくく、随意収縮が困難な骨盤底筋群の強化に向けた新たなセルフケア方策として、尿失禁改善の可能性を広げるものと期待している。
【略歴】
学歴:
1993年03月 京都大学医療技術短期大学部看護学科 卒業
2010年03月 滋賀医科大学大学院医学系研究科修士課程看護学専攻 修了
2013年09月 神戸大学大学院保健学研究科博士課程後期課程 修了
職歴:
1993-1996年 京都大学医学部附属病院 看護師
1997-2008年 京都府赤十字血液センター 看護師
2011-2014年 京都光華女子大学健康科学部看護学科 助教
2014-2018年 京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻 助教
2018-2021年 大阪医科大学看護学部 講師
2021-2025年9月 大阪医科薬科大学看護学部 准教授
2025年10月 大阪医科薬科大学看護学部 教授